目次
ユリを育てる前に
ユリの育て方は品種によって少々異なります。ユリの育て方を説明する前に、ユリの特徴や品種をご紹介します。
ユリの特徴
豪華で存在感のあるユリは、ユリ科ユリ属に属する植物で、その種類は約100種あると言われています。その中の15種類は日本のユリで、かつては日本の野山に自生して咲く、古くから愛されてきた花でした。
日本は美しい野生ユリの宝庫で、
- テッポウユリ
- ヒメユリ
- ササユリ
など、野生種とは思えない美しいものが多く、やがて、ヨーロッパに渡り品種改良されていくようになります。ユリの育て方は種類だけでなく時期によって異なる場合もあります。
交配してつくられた品種は、大きく分けて、
- オリエンタル系
- スカシユリ系
の2つの系統があり、育て方として、鉢植え、庭植えがありますが、切り花にして楽しむこともできます。
ユリは土の中で球根を肥大させ、春になると地上で茎をすらりと伸ばし、可憐な大輪の花を咲かせます。ユリの花びらは6枚あるように見えますが、外側にある3枚は、「外花被」と呼ばれる「がく」が変化したもので、内側の3枚だけが「内花被」と呼ばれる花びらなのです。
花は上向き、横向き、下向きに咲きますが、生育がよいほど1本の茎に多くの花をつける傾向があるようです。花色は白色、オレンジ色、ピンク色、黄色、赤色など多彩で、特徴的な香りは品種によって違いがあります。
栽培カレンダー
ユリは秋植えの球根性植物なので、育て方において球根の植え付けに最適な時期は10~11月です。球根が冬の寒さに一定期間あわないと発芽できないというのが、秋に植え付ける理由です。
ユリの育て方の注意点は10月を過ぎると球根が成熟するので、地植えの場合は数年置きに、鉢植えは毎年掘り起こして植え替えるようにしましょう。
ユリは冬を越えてから、3~4月頃に発芽し、5月になると茎葉がぐんと伸長し始めます。ユリの育て方として最適な時期は開花の5~ 9月ですが、花もちの日数は7~15日程度でしょう。
1 月 |
2 月 |
3 月 |
4 月 |
5 月 |
6 月 |
7 月 |
8 月 |
9 月 |
10 月 |
11 月 |
12 月 |
|
植付け | ◯ | ◯ | ||||||||||
発芽 | ◯ | ◯ | ||||||||||
開花 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
また、品種によっては下記のように、早く咲くものと遅く咲くものとの違いがあります。
- スカシユリ系の開花時期は、5月下旬~6月上旬
- オリエンタル系の開花時期は、7月中旬~7月下旬
- テッポウユリの開花時期は、6月中旬~6月下旬
《 ポイント 》
- 「オリエンタル系」と「スカシユリ系」の2つの系統がある。
- 多彩な花色があり、特徴的な香りは品種によって違いがある。
- 球根の植え付け時期は10~11月。
- 3~4月頃に発芽し開花は5~9月。
ユリを育てるために用意するもの
球根の選び方
ユリは10~11月、植え付ける時期になると、園芸店にはたくさんの球根が並ぶようになります。
ユリの育て方のポイントとして球根を選ぶ時は、ラベルの写真に惑わされることなく、球根の状態をしっかり確認してください。
花のサイズや数は球根がどれだけ肥大しているかに比例するので、まずは、
- 球根が大きい
- 重みのあるもの
- 表面に傷がない
- 乾いていないもの
を選びましょう。それが良質な球根を見分ける重要なポイントになります。
また店頭では見かけないような品種の球根を入手するには、ネット通販がおすすめですが、その場合は、信頼できる種苗メーカーやショップなのかを確認してから購入するようにしてください。
苗の選び方
ユリのポット苗は春~初夏にかけて園芸店やホームセンターの園芸コーナーに並びます。育て方を失敗しないためにもユリのポット苗は直接手に取って確認してから入手しましょう。
売り場には同じ品種でもたくさんの苗が並んでいますが、それぞれ開花イメージがわかる写真ラベルがついていますので、それを参考にして選んでみましょう。ただし、苗にも良し悪しがあります。
ユリの育て方において虫の駆除は面倒ですので、最初から虫や白いカビのようなものがついていたり、他の苗と比べて葉色が悪い苗は避けましょう。一方、よい苗とは、株元がクラクラすることなくしっかりと根が張っています。
用土
植物は元々の自生地と同じ環境を好みますので、ユリの場合も品種によって好みの土質が違います。育て方で地植えの場合は、種類ごとに好みの土質の場所に植えるようにしてください。
- ロンギフローラムハイブリッド、テッポウユリは、水はけ、水もちがよい、砂質を含んだ粘土質の土を好みます。
- オリエンタルハイブリッド、ヤマユリ、ササユリ、カノコユリは、水はけのよい腐植質に富んだ土を好みます。
- アジアティックハイブリッド、エゾスカシユリ、イワトユリは、水はけのよい砂質の土を好みます。
ユリの育て方として鉢植えの場合は、市販の草花用培養土、もしくは球根用培養土と書かれた培養土を使います。基本的には水はけがよく、通気性に富み、適度な保水性のある土が適していますが、ユリの種類によって、砂質土壌と腐植質を多く含んだ粘土質土壌を調合します。
特に球根が腐りやすい野生種などを植える場合は、鹿沼土や日向砂、桐生砂を多めに混ぜます。園芸品種であれば、市販の草花用培養土でかまいません。
《 ポイント 》
- 球根が大きく重みのあるもの、表面に傷がなく乾いていないものを選ぶ。
- 虫や白いカビのようなものがついている苗、葉色が悪い苗は避ける。
- 株元がクラクラせずしっかりと根が張っているのがよい苗。
- 地植えの場合は、種類ごとに好みの土質に植える。
- 鉢植えの場合は、市販の培養土を使うようにする。
ユリを育てるポイントは置き場所
ユリは風通しがよく、明るい場所を好みますが、種類によっては、半日陰を好むものもあるので、ユリの種類を確認しておくと安心です。
ユリの育て方で日照条件も重要です。品種によって日照条件が異なりますので、下記を参考に、球根の植え場所、鉢の置き場所を変えてみましょう。
- アジアティックハイブリッド、ロンギフローラムハイブリッド、トランペットハイブリット、スカシユリ、テッポウユリは、日当たりのよい場所を好みます。
- オリエンタルハイブリッド、ササユリ、ヤマユリは、西日が当たらない明るい半日陰を好みます。
なお、ユリの球根は夏の暑さや株元の乾燥を嫌うので、育て方の注意点として梅雨明けや真夏の気温が高い時期には直射日光が当たらない場所に植えてあげてくださいね。
《 ポイント 》
- 風通しがよく明るい場所を好む。
- 球根は夏の暑さや株元の乾燥を嫌うので直射日光を避ける。
ユリの育て方
植え付け方法
ユリの育て方において、植えつけの適時は10~11月です。地植えの場合は、2~3年は植え替えなくても大丈夫ですが、鉢植えの育て方の場合は、毎年植え替えるようにします。
地植えの手順
- 球根を植え付ける1~2週間前に、30㎝くらいの深さに掘り、よく耕して土作りをしておきます。
- 球根2~3個分の深さに植えられるように、植え穴を決め球根2個分の深さに調整します。
- 植えつけ間隔は球根3個分を目安に植え穴に球根を並べます。
- 覆土をしてから、たっぷりと水やりして完了です。
ユリの育て方で地植えした時の注意点として、誤って掘り起こしてしまわないように、植えた場所がわかるよう印をつけておくようにするとよいでしょう。
鉢植えの手順
- 球根の直径に対して、3倍以上の直径サイズで、且つ深さがある鉢を準備します。
- 鉢に鉢底ネット、鉢底石を入れます。
- 鉢の上端から球根2~3個分の深さに植えられるように培養土を入れます。
- 球根をいくつか並べて植える場合には、球根1~2個分の間隔をあけて培養土の上に並べます。
- 土から養分と水分を吸収する上根を十分に張れるように、球根1個分の深さに植え付け、その上に覆土をしてからたっぷりと水やりします。
水やり
ユリの地植えの場合、植え付け直後にたっぷりと水やりをしたら、後は自然に降る雨に任せます。ただし、極端に乾燥した日が続いた時には、水やりをしてください。
鉢植えの場合は、鉢土が乾いたら鉢底から流れ出るくらいにたっぷりと水やりをします。
夕方以降に水やりをすると、夜間の冷えこみで、凍ってしまうことがありますので、午前中のうちに済ませておきます。ユリの球根が、過湿が原因で腐ってしまわないように、鉢土が湿っている時には水やりをしないようにしましょう。
肥料
ユリの球根を植え付けた時や苗の定植時に、元肥として長くゆっくりと効き目を現す「緩効性肥料」を1㎡当たり100g施します。その後、芽が出始めた頃に、同じく緩効性肥料を追肥し、さらに花後にもお礼肥えとして与えます。
ユリの鉢植えの場合は、用土1リットル当たり2gの緩効性化成肥料を元肥として施し、生育期間中は、2週間に1回を目安に様子を見ながら液体肥料を施します。
《 ポイント 》
- 地植えは2~3年、植え替えなくてもよい。
- 鉢植えは毎年植え替える。
- 鉢土が湿っていたら水やりをしない。
- 球根を植え付けた時や苗の定植時に、元肥として緩効性肥料を施す。
ユリの育て方で気を付けること
注意する病害虫と対策
ユリによく見られる病気には、
- 球根腐敗病
- ウイルス病
- 青かび病
- 葉枯病
があります。発見したらすぐに病気の株を抜き取って処分する以外の方法はありません。
害虫は、ウイルス病を媒介するアブラムシが若い葉や蕾の周辺に発生することがあります。見つけ次第こそげ落とす、もしくは株元にオルトランをまくなどの対策をしてください。
鉢植えは毎年植え替えをする
ユリの育て方で鉢植えの場合は、鉢土が劣化しますので、開花後に葉が黄変したら球根を掘り上げて毎年植え替えをします。地植えの場合は、数年間植えっぱなしにしたままでも大丈夫です。
《 ポイント 》
- 病気を発見したらすぐに株を抜き取って処分する。
- 害虫を見つけたらこそげ落とすか株元にオルトランをまく。
- 鉢植えは開花後に葉が黄変したら球根を掘り上げて毎年植え替える。
ユリの育て方に関するQ&A
A.ユリは、単体で植えることが多いですが、ユリの育て方で寄せ植えの際は、下草代わりに株元にアイビーを植えたり、ムスカリなどの小球根をおすすめします。
A.ユリの切り花を花瓶などに活ける際は、もう一度水中で切る「水切り」をする、受粉させないために雄しべの先を切り取る、水の中で細菌が増えないように、少しでも濁っていたら水を交換する、水に浸かる部分の下葉を取っておくなど、長持ちさせるためのポイントをおさえておきましょう。
《 ポイント 》
- 相性のいい寄せ植えはアイビーやムスカリなど。
- 長持ちさせるコツは水切り、雄しべの先を切り取る、水を交換する、下葉を取り除くこと。
ユリの増やし方
秋に植え付けたユリの球根は土の中で栄養を蓄え、新しい鱗片が肥大していきます。この肥大した球根が2つに割れていることがあるので、育て方のポイントとしてこれを掘り上げたのち分球して増やします。
また、珠芽(むかご)や木子(きご)ができる品種のものは、花後に採取した種を蒔くという方法もあります。ただし球根以外のやり方で増やした場合は、開花までに数年かかります。
《 ポイント 》
- 掘り上げた球根を分球して増やす。
- 花後に採取した種を蒔いて増やす方法は開花までに数年かかる。
最後に
ユリの育て方について、いかがでしたでしょうか?
ユリは、その花の美しさと栽培のしやすさから海外でも人気の華やかな花です。ユリの品種によって適した場所が異なりますので、球根を購入したら、まずは土質の環境を調整してから植え付けて育てていきます。
開花の時期にはユリのいい香りが庭やお部屋を包み込みますので、さまざまな種類を育てている愛好家は数多くいらっしゃいます。
最後にひとつ、ユリの球根は、多くの鱗片が重なり合っている形状をしていますよね。沢山重なり合っているということから、「百合」と名付けられたという、素敵な名前の花なのです。