目次
ジャスミンを育てる前に
アジアやアフリカなどの暖かい国が原産のジャスミンですが、住んでいる地域によっては庭植えを楽しむことができます。
まずは、ジャスミンがどんな植物なのか見ていきましょう。
ジャスミンの特徴
ジャスミンは、モクセイ科ソケイ属の植物です。「ジャスミン」と名のつく植物は、数種類あります。なかにはジャスミンとは異なる、毒のある品種もあるので、注意しましょう。
ジャスミンの仲間
ハゴロモジャスミン
花びらの裏がうっすらピンク色の白い花と、甘い香りが特徴的。常緑つる性木本。ほかのジャスミンと比べると耐寒性が強い。フェンスに誘引してうまく育つと目隠しになる。
アラビアジャスミン(マツリカ)
アラビアジャスミンの花は、ジャスミン茶として利用される。一般的にはアラビアジャスミンのことをジャスミンと呼ぶ。花にふんわり甘い芳香がある。耐寒性が弱いので室内で冬越しさせる。
ホワイトプリンセス
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/B078GYHM3F/
半つる性で鉢植えに向く。いい香りで、長い期間白い可憐な花を咲かせる。耐寒性は強い方だが冬越しは室内が安全。
ジャスミンの仲間ではない
カロライナジャスミン
黄色い花が咲き、上品で甘くいい香り。口に入れると中毒症状を引き起こす危険性がある。耐寒性が強い。
マダガスカルジャスミン
ガガイモ科の植物。香りがよく、ジャスミンの花に似ているが別の植物。葉や花、根、実のすべてに毒性を含むので注意が必要。
カロライナジャスミンとマダガスカルジャスミンは、ジャスミンという名前がついていますが、別の植物なので間違えないようにしましょう。
《 ポイント 》
- ジャスミン茶に使われるのはアラビアジャスミン(マツリカ)
- カロライナジャスミンとマダガスカルジャスミンは、ジャスミンとは別品種で口に入れると中毒を起こすので注意!
苗木の植え付けに適した時期
市販されているジャスミンの苗木を購入する際には、葉がたくさんついているものを選んでください。春先、庭に地植えしたい場合は、遅霜の心配がなくなるまで待ちましょう。
植え付け適期
- 春…3月下旬~4月下旬頃(霜が降りなくなってから)
- 秋…9月下旬~10月下旬
ジャスミンの種類によっては、地植えにすると冬越しできずに枯れてしまう可能性があります。寒さに弱いアラビアジャスミン(マツリカ)は、10℃を下回ると枯れてしまいます。寒冷地ではジャスミンを地植えではなく鉢植えにして、冬場は室内に移した方が安心です。
適した用土
ジャスミンを鉢植えにする場合、ハーブ用の土をそのまま利用すると楽ちんです。ほかのハーブと同じように、ジャスミンが好むのは酸性ではなく中性~アルカリ性の土です。なお、土を自分で作るなら、以下の割合がおすすめです。
- 赤玉土…6
- 腐葉土…4
肥料が多く入った用土は、ジャスミンには不向きです。また、使い古した鉢植えの土や、その辺の土を使用するのはやめましょう。雑菌や雑草の種などが入り込んでしまうことがあります。さらに、雨で酸性に傾いている可能性も。粘土質で水はけの悪い土も避けてください。
《 ポイント 》
- 植え付け時期は霜の心配がない時期におこなう
- 暖地以外は、室内で冬越しさせた方が安心
- ジャスミンに適するのはアルカリ性の水はけがいい土
ジャスミンの育て方
ジャスミンがうまく育てば、花が咲く季節の庭はとても華やかになります。それでは、ジャスミンの育て方を見ていきましょう。
植え付け方法
ジャスミンは、鉢植えでもつるをうまく誘引すればボリュームが出るので、玄関などに置くと華やかです。暖かい地域なら地植えにするとグングン育ち、庭のアクセントになります。ここで、ジャスミンを鉢植え、地植えにする方法を紹介します。
用意するもの
- 苗がすっぽりおさまる大きめの鉢
- 赤玉土
- 腐葉土
- 軽石(なければ小石)
- 小さな網(鉢底ネット)
- バケツ
- じょうろ
手順
- 鉢の底の穴がふさがるように、小さな網か鉢底ネットを敷く
- 軽石か小さな石を敷き詰める
- バケツなどに赤玉土6、腐葉土4を入れて混ぜる
- 鉢の7~8分目まで土を入れ、中央に穴をあける
- 苗を育苗ポットからそっと抜き、形を崩さずにそのまま鉢に植える
- 苗と土の隙間が埋まるように、土をかぶせる
- 土の表面をギュッと押す
- つるが伸びたときに誘引できるように、支柱を立てておく
- じょうろで、鉢の底の穴から水が流れ出るまで十分に水を注ぐ
水やりの際に水が鉢からあふれ出ないようにするために、鉢の上部から土の表面の間に2センチほどの隙間(ウォータースペース)を作っておきましょう。
地植え方法
地植えの場合は、つるが絡まるようにフェンスなどの下に植えるといいでしょう。
用意するもの
- 小さめのシャベル
- もみがら燻炭
- 腐葉土
- じょうろ
手順
- 半日陰で水はけのいい場所に、苗よりも二回り大きい穴を掘る
- もみがら燻炭と腐葉土を穴に適量入れて混ぜる
- 苗を育苗ポットからそっと抜き、形を崩さずにそのまま土に植える
- 苗と土の隙間が埋まるように、土をかぶせる
- 土の表面をギュッと押す
- じょうろで十分に水を注ぐ
もみがら燻炭はアルカリ性なので、酸性に偏った庭土に混ぜることで中和させることができます。ジャスミンを育苗ポットから出す際は、根が切れやすいので注意し、やさしく丁寧に扱ってくださいね。
置き場所
ジャスミンは、日当たりの良い場所を好む植物です。ただし、夏の強い日差しが当たるベランダなどに置くと、葉焼けを起こすことがあります。ジャスミンが好む場所は以下のとおりです。
- 時間帯によって半日陰になるような場所
- 強い日差しを避けられる場所
- 水はけのいい場所
- 冬の寒さに耐えられる場所
地植えの場合、梅雨の季節に水がたまるような場所では、水はけが悪くなり根腐れを起こします。
また、アラビアジャスミン(マツリカ)は10℃を下回ると枯れるので、冬場の管理に注意しましょう。ハゴロモジャスミンは比較的耐寒性が強い方ですが、関東よりも北の地域では、室内で冬越しさせると間違いありません。
《 ポイント 》
- ジャスミンは強すぎる日差しと寒さに弱い
水やりのコツ
地植えしたジャスミンは、水やりせずに雨水で十分です。しかし、雨が長い間降らない夏の高温期は、葉に元気がなくなってくることがあります。気になったら、株元にたっぷり水をあげましょう。
鉢植えのジャスミンは放っておくと水切れを起こし、葉がしおれてきます。花が咲いている期間はとくに水が切れないように注意し、土が乾いたらそのつど水やりをしましょう。
冬場はひんぱんに水やりする必要はありません。水をやりすぎると根腐れを起こすので、つねに乾燥させておくぐらいがちょうどいいです。
《 ポイント 》
- 地植えのジャスミンはほとんど水やりなしでOK
- 鉢植えのジャスミンは土が乾いたらたっぷり水やりをする
- 冬場はほぼ水やりの必要がない
肥料の与え方
ジャスミンを植え替え後、およそ10~12日経ったら緩効性の肥料を与えましょう。肥料には、緩効性の有機肥料である固形の油粕がおすすめです。なお冬場は生育期ではないので、肥料を与えなくても大丈夫です。
ジャスミンの育て方のポイント
ジャスミンは寒さ対策さえすれば、とくに過保護になって手入れする必要はありません。しかし、剪定の仕方を間違えると翌年花が咲かない、といったこともあります。
毎年きれいな花を咲かせるための育て方のポイントを3つ紹介します。
来年も花を咲かせるには
ジャスミンは、花が咲き終わったらすぐに剪定するのがおすすめ。夏場高温になる前までに、伸びたつると、花が落ちた後のつるをカットしましょう。切り戻しすぎに注意しながら、混み合った箇所をすっきりさせるイメージで剪定してください。
ジャスミンの花芽は低温に当てることで作られ、来年咲く花の準備をします。花芽があるのを確認した後に、室内で冬越しさせてください。耐寒温度を下回る前までに、かならず花芽をチェックしておきましょう。
耐寒温度
- ハゴロモジャスミンの耐寒温度…0℃
- アラビアジャスミン(マツリカ)の耐寒温度…10℃
剪定の時期と注意すること
夏前に剪定できなかった場合は、遅くても9月半ばまでには済ませましょう。剪定適期を逃すと、花芽がつかなくなることがあります。できるだけ、花後の早い時期に剪定してください。
剪定の際は、伸びきった脇のつるを3分の2程度までカットしても大丈夫です。ただし、主要なつるを切らないように注意してくださいね。
植え替え方法
ジャスミンが大きくなるにつれて、根も窮屈になります。鉢の底の穴から根が見えているときは、植え替えをしなければ生育に悪影響を与えます。二回り程大きな鉢を準備し、早めに植え替えましょう。
手順
- 二回り程大きな鉢を用意しておく
- 根を傷つけないよう注意し、鉢からやさしくジャスミンを取り出す
- 鉢の底の穴がふさがるように、小さな網か鉢底ネットを敷く
- 軽石か小さな石を敷き詰める
- バケツなどに赤玉土6、腐葉土4を入れて混ぜる
- 鉢の7~8分目まで土を入れ、中央に穴をあける
- 根に付着した土を軽く落とし、鉢に植える
- 苗と土の隙間が埋まるように、土をかぶせる
- 土の表面をギュッと押す
- じょうろで、鉢の底の穴から水が流れ出るまで十分に水を注ぐ
鉢植えのジャスミンは、だいたい2年に1度の植え替えをおすすめします。支柱やトレリスにつるが巻き付いている場合は、その状態で固定したまま植え替えましょう。
《 ポイント 》
- 剪定は花が咲き終わり、暑い夏がくる前までに!
- 耐寒温度を下回る前までしっかり寒さに当てることで、来年咲く花の花芽が作られる
- 剪定の時期を逃すと、次の年に花が咲かなくなる可能性がある
- 鉢の穴から根が見えていたら、根が窮屈になっているサインなので早めに植え替える
ジャスミンの育て方でよくあるQ&A
ジャスミンを栽培するうえでの疑問点に回答します。
A.ジャスミンは丈夫な植物なので、病気の心配はとくにありません。
A.目立った害虫被害はありませんが、暖かくなってくるとアブラムシやハダニ、カイガラムシが付く場合があります。蒸れないように、混み合った部分を剪定し通気性を保ちましょう。
A.専用の殺虫剤を散布するか、不要になった歯ブラシなどではらって落とすといいでしょう。カイガラムシは、一匹ずつピンセットで取ります。アブラムシ対策には、スプレー容器に牛乳を入れてスプレーし、乾いたらに水シャワーで流すといった方法もあります。アブラムシを増やさないためには、発見したら早めに駆除するべきです。放っておくと、アブラムシがどんどん増えてしまうので注意してください。
ジャスミンを自宅で育てる際の参考にしてみてください。
ジャスミンのふやし方
挿し木という方法で、ジャスミンを増やすことができます。挿し木をすれば、切った枝から新たな根が出て、ミニジャスミンがいくつも作れますよ。以下の手順で、挿し木にチャレンジしてみましょう。
挿し木のやり方
用意するもの
- 小さな容器
- 小さめの鉢
- 赤玉土(細かいタイプ)
- 小さな網(鉢底ネット)
手順
- しっかりした太い枝から新しく伸びた枝を、5節ほどの長さでカットする ※枝についた葉から葉までを1節とする
- 小さな容器(グラスなど)に水を入れる
- 2にカットした枝の切り口が水に浸るように入れ、1時間ほど水揚げする
- 鉢に小さな網を敷き、赤玉土を入れる
- 水を吸わせたジャスミンの枝を、土に挿す
- ぐらつかないようにして、十分に水やりをする
- 強い日差しを避けて、室内に置く
挿し木は気温が15℃を超える季節(4月~9月頃)におこなうと、うまくいく可能性が高いです。土が乾かないように注意し、こまめに水をあげましょう。
最後に
多くの人が「ジャスミンを育てるのは難しそう…」と思っているかもしれません。
しかしジャスミンは、寒さにさえ注意すれば比較的手のかからない植物です。ジャスミンが満開の季節には、甘い香りと可憐な姿に感動するはずです。
今回紹介した育て方のコツを参考にして、ジャスミンを自宅で栽培してみてはいかがでしょうか。