「適正」と「適性」の違いと使い分けの方法【大人の参考書】

適正と適性の違い

「適正」と「適性」はどちらも「てきせい」と読みますが、意味や使い方の違いをご存知でしょうか?この二つに共通しているのは「適」という文字です。「適」にはふさわしいという意味がありますが、何がふさわしいのか?で「適正」と「適性」は異なります。今回は違いが分かりにくい日本語のひとつである「適正」と「適正」の違いをご紹介いたします。

「適正」と「適性」の違い

適正と適性の違い

適正は適性はどちらも「テキセイ」と読みます。また、どちらも「適」という文字が使われていますが、「適」は「ふさわしい・あてはまる」という意味で、何がふさわしいかに違いがあります。

何がふさわしいかの違い

  • 適正:「物や事柄」がふさわしい
    正しい、妥当といった意味や意味合いを含む言葉
  • 適性:「性質や性格や能力」がふさわしい
    合う、向き不向き、合致、相性などの意味や意味合いを含む言葉

簡単な説明ですが、だいたいのイメージはお分かりになったと思います。次は、適正と適正の違いをもっと詳しくご紹介したいと思います。

「適正」とは

適正とは、文字通り「正しく適している」という意味の言葉となります。ものごとが適当かつ正しい様を表す言葉であり、具体的には、「適正な手段」「適正な手続き」「適正さを欠く」といった使われ方をしています。

例えば、「適正価格」の意味は、原価や利益分などを考慮に入れた上で、ある物の価格が通常考えられる範囲内において、最も常識的で妥当な価格であることを指しています。原価や利益を考慮に入れた上で決定した価格が、一般的に考えられる価格よりも高過ぎたり、あるいは、逆に低すぎたりしない価格のことを言います。適性の類義語に「妥当」という言葉があり、「妥当な価格」と表現さることがあります。

「適性」とは

適性とは、「その性質が、その事や分野に適している事」を適性といいます。それぞれの個別の人々が、対象となる事や分野に対しての可能性について使用される言葉であり、「適性がある」といった場合、その個別の性質、性格、能力などが、対象に対してふさわしいという意味で使われています。人を主体として物事に対して、どのくらい適しているか、端的に言うと、能力や才能を指すことを言うことが多いでしょう。

適性は、それぞれの人間一人一人が個別に持つ、ある分野に対して適応できる可能性を指しますので、学習、運動、芸術、職業などのさまざまな分野に存在しています。特に難易度の高い分野ほど、適性の有無や高低が問題になり、厳しい評価基準が設けられます。

例えば、プロフェッショナルのスポーツチームなどにおいては、先天的な運動能力を含め、練習での上達具合、試合での実績などをトータルで査定され、その適性が評価、判断がされます。
スポーツの「適性」は、結果や能力のみを指して言う場合も多くありますが、職業などにおいての「適性」は、対象分野に対する態度や目的意識、肯定的な視点があるかなどを含めることも多くなってきています。単に能力があるだけではなく、その分野に対して、積極的で肯定的な目的意識を持っているかどうかも、適正を量る上で重要なポイントになっています。適性という言葉は、名詞、複合名詞として使用されています。

適性がつく具体的な言葉としては、「適性評価」「適性検査(※1)」「適性を欠く」といったものがあります。

※1:適性検査とは
適性検査は、その人がどのような分野や性質に適しているかを調べるものです。適性検査にはさまざまな種類があり、個人の特性を調べる「職業適性検査」、能力や知能を調べる「能力適性検査」などがあります。適性検査は入社テストなどで行われることが多く、一般的に入社テストでは「知能・学力検査」と「性格検査」からなっており、一般常識、言語能力、計算能力、性格、性向を調べ、企業の職務に対し、どれほど適した素質・能力があるかをはかります。学力や能力が高い人が仕事ができるわけではありません。企業としては学力や能力だけではなく、人間性、性質、考え方、知能、意欲、感情、価値観などさまざまな面から職務に対する「適性」を判断します。

「適正」と「適性」の使い方と類義語

適正と適性の違い

例えば、サッカー競技において、その身体的能力や才能においては、素晴らしい実績を出した学生A君がいるとします。この状況下において、この学生A君は、「サッカー選手として適性がある」ということになります。しかし、このサッカー選手として適性のあるA君が、サッカー競技は好きではない、サッカー選手は全く興味がない場合は「適正ではない」ということになります。

「適正」を使用した例文

  • このお店では、電化製品が適正な価格で販売されている。
  • 駐車の許可を取るには適正な手続きをする必要がある。
  • この問題の解決方法は適正さを欠く。
  • コンサートの前売り券が適正な価格で予約できる。
  • 今回の対応は適正な手段だった。

「適正」の類義語

「妥当」「適当」「相応」「適切」「的確」「正当」「よい」「ただしい」

「適性」を使用した例文

  • サッカー選手と適性である。
  • SPIは多くの企業の採用選考で利用されている適性検査である。
  • 部長はその部署に所属する部下の適性を見抜く必要がある。
  • 彼女には演奏家としての適性が大いにある。
  • あなたは運転に適性がない

「適性」の類義語

「向き不向き」「適任」「相性」「適合」「合致」

仕事における「適正」と「適性」

適正と適性の違い

企業は社員の「適性(能力)」を見て、組織の中で適性が生かせる仕事、部署に配置しようとします。その仕事で成功した場合「適正(ふさわしい)」だったと判断できます。むずかしいのは「適性」だから「適正」だったとはいえないことです。たとえば、学力や計算能力が高く理数系の知能を持つAさんには経理の仕事が適性だと考えて配属したとします。Aさんが経理の仕事で得意な計算能力を発揮して楽しく仕事をしていたら「適正」だったといますが、反対に計算が嫌いで経理の仕事に苦痛を感じていたら「適正」ではなかったと判断できます。

  • Aさんは計算能力が高いので経理の仕事は適性であると判断
  • Aさんは計算能力はあるが計算がきらいで苦痛なので適正ではないと判断

たとえ適性(能力や才能)があっても、本人がそれを望まなければ、適正にはなりません。適性は能力のみを指す場合もありますが、その分野に対する意識や態度や好き嫌いを含めて適性と指す場合もあります。

仕事や職業において、「適性」と「適正」が一致すれば、これ以上のことはありませんが、現実的には、どちらかが満たされていれば幸せなのではないか…と、思われる方はおおいのではないでしょうか。例え1つの仕事上で、「適性」と「「適正」2つが完璧にぴたりとこなくても、どちらかを、趣味やセカンドワークに求めることもできます。

これからの人生において、就職や転職などをお考えになられる際に、この2つの言葉を理解した上で、2つの事実を合わせて考えながら進路を決めてみてはいかがでしょうか。

企業としては、社員の「適性(能力)」に沿って「適正(ふさわしい)」仕事に配置し、より「適性(能力)」を伸ばすことで社員を育成します。自分の「適性」を見極め「適正」な職務につくためには、自分で適性検査をしてみるのもおすすめです。

最後に

適正と適性の違い

適正と適性、発音は全く同じだけれど、意味の異なるこの2つの言葉について、掘り下げてご紹介いたしました。日常生活においての使い分けはさほど難しくないと感じる方は多いかもしれませんが、あらためて聞くと「ああ、なるほど・・」と納得すると思います。「適性」は事象だけではなく、本人の意思や意向が合わさったときにはじめて「適正」であるかどうかが判断されますので「仕事」や「職業」の中では「適正」の方が使用頻度は高いかもしれませんね。

人生の進路を決める際に、この2つの言葉、「適正」と「適性」をキーワードにして、ご自身とじっくり向きあってみては、いかがでしょうか。

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