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クロスドミナンスと両利きの違い
「右利き・左利き・両利き」はよく聞きますが、「クロスドミナンス」という利き手もあるのをご存じですか?
クロスドミナンスは日本語では「交差利き」と呼ばれています。クロスドミナンスも両利きも右手も左手も使うので、同じだと思われがちですが大きな違いがあります。
クロスドミナンス(交差利き)とは
両利きは、右手でも左手でも同じように使えますが、クロスドミナンスは用途によって右手と左手を使い分けます。
〈両利きの特徴〉
- 「箸」は右手でも左手でも使える
- 「字」は右手でも左手でも書ける
- 「包丁」は右手でも左手でも使える
〈クロスドミナンスの特徴〉
- 「箸」は右手を使う
- 「字」は左手を使う
- 「包丁」は右手を使う
というふうに、クロスドミナンスは用途によって利き手が入れ替わる(=交差する)ので「交差利き」と言われているのです。
脳の働きは利き手によって特徴がありますので、クロスドミナンスの人の脳にも特徴があります。
クロスドミナンスのほとんどは後天性
クロスドミナンスは、「先天性」と「後天性」の2種類ありますがほとんどは後天性で、先天性は極わずかです。
生まれつきクロスドミナンスの人の脳は持って生まれたものですが、後からクロスドミナンスになった人の脳は発達したことになります。
先天性クロスドミナンスの場合
乳児から幼児期にかけて、つかむものによって利き手が変わるお子さんは先天性のクロスドミナンスの可能性があります。
例えば、親の指をつかむ時は右手、おもちゃを持つ手は左手、口に物を入れる時は右手というふうに、用途によって利き手を変えています。
赤ちゃんに利き手があると思わなければ、用途によってどちらの手を使っているかなど気が付かないかもしれませんね。
後天性クロスドミナンスの場合
幼児期前半までは左利きだったのに、親が右利きにさせた場合は後天性です。
例えば、幼児が左手で持っているスプーンを親が右手に持ち替えさせて、右手で食事をする練習をさせた場合は、クロスドミナンスになります。
親が強制しなくても、世の中の物は右利きを基準に作られていますので、左利きの人も用途によっては右手を使った方が楽なものもあり、その用途だけは自然と右利きになることもあります。
また、やむをえずクロスドミナンスになる人もいます。例えば、右利きだった人が右腕を骨折し、左手を使うしかなかった結果、箸は左利きになった人もいます。
実は私もクロスドミナンスで5歳まで左利きでしたが、「小学生になるんだからお箸は右手で持ちなさい!」と訳も分からず急に右手の訓練をさせられました。
でも、鉛筆だけはどうしても左手でしたので今も文字を書くのは左手です。
両利きはのほとんどは後天性
クロスドミナンスのほとんどは後天性ですが、両利きもほとんど後天性です。
生まれつき両利きの人はわずか1%ほどだと言われています。例えば、最初は右利きだったけど、左でも同じ動作ができるようになったなどです。
なお、クロスドミナンスのクロス(cross)は交差を意味し、ドミナンス(dominance)は、支配などを意味します。つまり手の「支配=利き手」が「交差」するという意味になりますね。
《 ポイント 》
- クロスドミナンスは日本語では「交差利き」と呼ばれている。
- 両利きは、右手でも左手でも同じように使える。
- クロスドミナンスは用途によって右手と左手を使い分ける。
クロスドミナンスの人は脳が発達している?
利き手は脳の動きと関係しており、クロスドミナンスの人の脳は発達していると言われていますが、脳の作りや働きをご存じですか?
脳には右脳と左脳があり、それぞれ働きが異なります。また、利き手と脳は左右対称に関係しています。つまり、右脳は左手をコントロールし、左脳は右手をコントロールしています。
右脳の働き
ひらめき、直感、想像力、創造性、芸術性、音楽感覚、空間認識など感覚的認識
左脳の働き
計算、読み書き、会話、分析、文字認識など論理的思考
利き手と脳は左右対称ですので、右利きの人は左脳の論理的思考が発達し、左利きの人は右脳の感覚的認識が発達していることになります。
クロスドミナンスの脳の特徴
利き手と脳が左右対称ということは、状況に応じて右手と左手を変えて使うことができるクロスドミナンスは、右脳も左脳も発達していることになりますね。
クロスドミナンスの脳は左右の脳がバランスよく鍛えられています。脳には脳梁(のうりょう)と呼ばれる右脳と左脳をつなぐ経路がありますが、クロスドミナンスはこの脳梁が発達し、人より優れた能力を発揮することができます。
また、日本において左利きの人は人口の12%、右利きは88%とされていますので、ほとんどのものが右利き用に作られています。
左利きの人が右利き用のものを使いこなすために、クロスドミナンスになる努力をしますので右利きの人より脳を鍛えることができます。
《 ポイント 》
- クロスドミナンスの脳は左右の脳がバランスよく鍛えられている。
- クロスドミナンスは脳梁が発達し人より優れた能力を発揮することができる。
クロスドミナンスや左利きのメリット・デメリット
クロスドミナンスの脳がバランスよく発達していることを考えるとメリットばかりのように感じますが、クロスドミナンスや左利きにはデメリットもあります。
ここでは、クロスドミナンスや左利きのメリットとデメリットを比較してみましょう。
クロスドミナンスや左利きのメリット
クロスドミナンスのメリットは、左右で違う作業をすることができることです。例えば、左手で電卓を打ちながら右手で書くことが可能ですので便利ですね。
また、クロスドミナンスは片方の手だけに負担をかけないように使い分けることができます。書く時は右手、食事は左手、スポーツは左手、楽器は右手、というふうにバランスよく使うことでどちらか片方だけに負担をかけるということはありません。
クロスドミナンスや左利きのデメリット
日本の人口の88%は右利きですので、ほとんどのモノが右利き用に作られていますので、左手を使う場合に不便なモノが多いです。
また、不便なのはモノだけではありません。自動販売機のコイン投入口や駅の自動改札、ドアノブの回転の向きなども左利きにとっては不便です。
飲食店などで食事中、自分の左の席に右利きの人が座った場合、相手の手にぶつかってしまうこともあります。
〈左手で使うのに不便なモノ〉
- はさみ、ものさし、ホチキス、万年筆などの文具類
- 横手の急須、缶切りなどの調理器具
- ドアノブ(回転方向)
- 駅の自動改札
- 自動販売機のコイン投入口
- カメラのシャッター
- 腕時計のリューズ
- 自転車のスタンド
- パソコンのマウス
- スマホカバー(開く方向)
など
クロスドミナンスになる方法はある?
クロスドミナンスになって脳を活性化させたいと思うかもしれませんね。大丈夫です。今からでもクロスドミナンスになることができます。
クロスドミナンスになる訓練法
- 歯を磨く手を変える
- 箸を使う手を変える
- 文字を書く手を変える
まずはこの3つをマスターしてみましょう。
歯を磨く手を変える
歯を磨く手を変えるのは、比較的早くマスターできると思います。歯ブラシを持つ手首の動きが変な動きになってしまう時は、利き手の動きを確認しながらしましょう。
例えば、右利きの人が左手で歯を磨く場合、右手で歯を磨く架空の動作をしながら、左手で実際に歯を磨いてみましょう。
箸を使う手を変える
箸を持つ手を変えるのは難易度が高くなります。まずは箸の持ち方から練習しましょう。
これだけでも結構難しく、最初は2本の箸を挟む指が合わずに箸の向きが変な方向を向いてしまうと思います。そんな時は、利き手で箸を持ち、箸を挟む指を確認しながら練習しましょう。
箸の持ち方が整ったら、まずは夕食から実践してみましょう。いきなり朝食から始めると、時間がかかり過ぎてろくに食べることができないまま会社や学校に行くことになります。
ただし、食べたいのに食べることができないイライラが続くとストレスになって挫折する可能性があります。
ストレスを感じた場合は次の方法を試してみましょう。
〈スプーンやフォークを使う〉
スプーンやフォークの持つ手を変えて食事をしましょう。スプーンやフォークを使うことに慣れたら箸を持つ手も変えましょう。
お味噌汁をスプーンやフォークで食べるのは違和感があるかもしれませんが箸を使う前の練習になります。
〈週に1~2度程度から始める〉
例えば、土日の昼食または夕食のみ、箸を持つ手を変えましょう。空腹すぎるとイライラしますので慣れないうちはゆとりをもって始めましょう。
箸を持つ手を変える方法は、ダイエットをしている方にもおすすめです。どうしてもゆっくり食べることになりますので、早食い防止になりますし、満腹感を早く感じることができます。
文字を書く手を変える
文字を書く手を変えるのも高難度です。まずはひらがなで練習し、漢字は自分の名前、住所などをきれいに書けるまで練習しましょう。
ひらがなの練習は、小学生用のひらがな練習帳を使うと書きやすいです。練習帳は100均でも販売しています。
他にマウスを持つ手を変えることもおすすめします。長時間パソコンを使っている場合、左右どちらでもマウスを使えると手首の負担が分担できますよね。
クロスドミナンスの練習をすることで脳トレにもなりますのでおすすめです。
最後に
クロスドミナンスの脳が発達しているのは右脳と左脳をバランスよく使えるからですね。
クロスドミナンスは一見難しそうですが、実はみなさんもクロスドミナンスの動きをしていることがありますよ。
例えば左手でスマホをいじりながら右手で食事をしたり、左手で電話をしながら右手で字を書いたりしたことはありませんか?
それ以外にも、基本は右利きなのにコップは左手で持つ、ペットボトルの蓋を左手で開ける、アイスクリームは左手で持つ、テーブルは左で拭く…自分が気が付かないうちにクロスドミナンスをしているかもしれませんね。